目的に応じたイギリス留学の使いわけ
日本の大学院は論文中心だけど、アメリカは実際の建築環境のリサーチや作品制作が勉強の中心、というIさんの説明も、十分納得できる。
「こういう発表形式は、日本だと本当にまれですが、ここでは週2回、こうやってなんらかのプレゼンテーションを行い、週1度は偉い先生が見てくれるんです。日程に追われるように、連日連夜、ボール紙を切ったり貼ったり…」(笑)理科系の科目では、外国語のハンディは少ないのでは、と思っていたが、間違い。
「建築に言葉は大切です。いかに素晴らしいアイディアか、雄弁に語らなければなりませんから」ハッタリ、という意味だけではない。
クラスメートや教授たちとのコミュニケーションが、自分の創造力を発展させる鍵になるのだと、活発な授業風景から実感した。
ここの修士課程は3年間だが、卒業後の進路については?「できるだけ長くアメリカに残って、建築業界の様子を見てまわりたい。そして日本でも一級建築士の資格を取らないと。実は、私が建築の世界を見て思うのは、なんだか建築家の思想と、一般の、本来建築の主人公であるべき立場の人たちの認識があまりに遠すぎる、ということなんです。これをもっと近づけるような仕事がしたい、という夢がある。だから、青年海外協力隊に入って、途上国に貢献することにも興味があるし、建築に関する教育の分野も考えています」後輩へのアドバイスとしては、「日本ではどうなの、とか、よく聞かれるんです。日本のことをもっと勉強しておけばよかったと思っています。今、私のまわりの院生たちは、学部時代哲学や数学を専攻していたとか、入る前は弁護士だったとか、経験や背景がとっても多彩で豊かですし」建築をいかに人間に近づけ、あたり前のことだが、人間の幸せにいかに貢献させるか。
たとえばヒューマンタッチの素材やデザインなどを通じ、これはすでにトップクラスの建築家のテーマの1つとなっている。
Iさんが将来、自分なりの視点からそうした問題意識に取り組むために、C大学という人的環境は非常に豊かなインプットを与えてくれていると思う。
旦那さんが海外に赴任することになって、奥さんがついて行く。
そして奥さんはその国の大学院に通ってマスターディグリーを取る……という話はよく聞く。
実際、海外駐在員の妻たちの向学心は見あげたものである。
しかし逆に、奥さんの留学が決まって、旦那が一緒に暮らすために転勤する、という話は、たいへん珍しい。
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